「八正道」という言葉をご存知でしょうか。八正道(はっしょうどう)はブッダ=お釈迦様が最初に説いた説法と言われます。
人の生きる道の事で、これを実践すれば涅槃へ到るとされています。凡人には難しそうなイメージがあるかもしれません。
しかしその実践方法や注意点は案外シンプルなものだったりします。八正道は八聖道と書く場合もありますが、正しい道=聖者の道についての説法なので、どちらでも通じます。
八正道の実践方法と注意点【正見】
八正道はその名が示す通り、8つの実践徳目で構成されています。正見・正思惟・正語・正業・正命・正精進・正念・正定の8つで、それぞれ実践方法と注意点が異なります。
仏教用語に詳しい方でない限り、文字だけではその内容は想像しにくいハズです。ここでは八正道における8つの実践徳目について、できるだけ平易にご紹介します。
まず最初に正見(しょうけん)についてです。正見をひと言であらわすと「物事をありのままに見る」ことです。どんなものでも、見えたままに捉えるのは簡単そうで難しいものです。人間の眼には盲点もあるし、見えたものを自分の先入観に従って認識してしまいます。
先入観を取り払う努力をして見る、それが正見の実践方法と注意点です。この感覚は絵画のデッサンなどに通じるものがあるかもしれません。
八正道の実践方法と注意点【正思惟】【正語】【正業】【正命】
次に八正道の正思惟(しょうしゆい)の実践方法と注意点です。
正思惟についてごく簡単に表現すれば「正しく思うこと」です。
惟(ゆい)という感じの語義は「思い巡らすこと」です。正思惟は自分の想念に対する戒めです。他者を害する気持ちが無いか?怒りの気持ちが無いか?欲望に目がくらんでいないか?こうした想念が自分の生き方をねじ曲げてしまわないよう気をつける心がけが正思惟です。
正語(しょうご)とは正しく語ること、すなわち言葉遣いに対する戒めです。
「悪言の玉は磨き難し」とのことわざがあります。人を悪しざまに語る言葉は、語った本人の人格を傷つけてしまい回復は困難という意味です。それを避けることが正語の実践方法と注意点です。
ただ考えてみると、人生において正語を貫くというのは困難も伴います。常に真実だけを語ろうとすれば、時として他人を傷つけ、ひいては自分自身に「悪言の玉」が生じてしまうケースもあるかもしれません。それを避けるには思い遣りのある言葉選びも大切です。
八正道の正業(しょうぎょう)とは正しき行いです。
無益な殺生をしない、盗みや詐欺を働いたりしない。基本となる実践方法・注意点は非常にシンプルなものです。
八正道の正命(しょうみょう)は、わかり易く表現すれば「正しい使命をもって生きる」ことです。
悪事に加担するような仕事をしていれば正道を踏み外してしまいます。
もし今の仕事が他人を殺めたり、傷つけたりする事につながっていると気付いたら、それは改めるべきだという事です。
八正道の実践方法と注意点【正精進】【正念】【正定】
正精進(しょうしょうじん)の「精進」は、言いかえれば「努力すること」です。
実践方法と注意点としては、まず正精進とは「正しくない事をしないよう努力する事」です。
資格を取るための勉強とか、学校で良い成績を目指す努力とは意味合いが異なります。悪い事をしない人は、それだけでも正しく精進ができているわけです。
最後に、正念(しょうねん)と正定(しょうじょう)はふたつで一対の考え方です。
正念は字のとおり「正しく念じる」ことで、そうすればありのままの自分に気付くことができるというものです。正念によって気付いた自分こそが正定だと言えます。
ここまで、ごく簡単にお話したのが八正道についてです。普段から八正道を学んでいる方でなくてもイメージしやすいように、実践方法と注意点についてまとめてみました。
日頃は仕事や生活に追われて、お釈迦様の教えを深く思い起こす余裕はないかもしれません。しかしこうした実践方法と注意点には、日常生活をプラスの方向に持っていく考え方、そのエッセンスが凝縮されている事に気付けるかもしれません。
八正道すべてを実践するのが理想ですが、なにかひとつでも気付いた事があったら、これからの生活に取り入れてみたいものです。