うちは霊が見える家系で、母が最もその力が強いのです。姉はそれほどでもありませんが、私はもろに受け継いだようです。
5歳くらいから「そこに実在しない人物」を見るようになりました。 白ぼけて見える、影のように暗く見える、時にはハッキリと生きているように見えます。
そのたびに母に言っていたら、「あなたも持ってるのね・・」と一言。
怖くないし異常ではないと言い聞かされ、10代になる頃には当たり前のように受け入れました。
ただ、母のようにいつでもどこでも見えるわけではなく、その日の体調など、コンディションによって変化したのが救いでした。
体調が絶好調の時はほとんど霊体が見えず、快適に過ごすことができます。声が聴こえたりもしないし、目の前で物が動くといったこともありません。
霊体を連れて帰る
そんな私が最も恐ろしいと感じたのは、20代になってすぐのことでした。
勤務していた会社は車通勤で、片道2時間近くかかる場所でしたから、とても疲れていたのでしょう。霊体が私の存在を察知した(ラジオの周波数を合わせるようなもの)時、その事件は起こりました。
帰りが夜中の1時過ぎになって、うとうとしながら車の運転をしていたら、突然、目の前に男性が飛び出してきました。
慌てて急ブレーキを踏んだのですが間に合わず、ドンと大きな音がしたので事故を起こしてしまったと驚きました。外に出ると誰もいなくて、次の瞬間、とても嫌な感じがして振り向くと、うっすらと体が透けた男性が立っていました。
何か言いたそうな表情で口を開けているものの、言葉は伝わってこなかったので、見て見ぬフリをして車に乗りました。こういう場合、あまり長居すると霊体に憑りつかれてしまうため、母からすぐにその場を去るように教わっていたからです。
でもその男性は明らかに私について来ているのが分かりました。それにどこかで見たことがある(目視はできないけれど感触で感じる)ような相手でしたが、思い出せなかったのです。
真冬だというのに汗をびっしょりかきながら運転して、何とか母が待っている実家までたどり着きました。
霊体を連れて帰るのはご法度ですが、無理やり引き離そうとすると、余計に執着される恐れがあります。車の運転を邪魔されると事故の元になるし、母に連絡したくても携帯は霊障で全く使えない状態だったのです。
地縛霊ではないのか?
車庫に着いてクラクションを鳴らすと、母が出てきてくれて、私の身に何が起きているのかすぐに察知してくれました。
なぜなら私の横に見えないはずの男性が1人、しっかりと座っていたのですから・・。
素人では除霊できないため、夜中にも関わらず、母の知り合いの住職に連絡して来てもらいました。
近所の目もあるため、車庫のシャッターを閉めてから、念仏を唱えてもらい、結界を張って盛り塩をすることで難を逃れました。ただ、驚いたのは翌日から車の電気系統がすべて壊れてしまい、ライトも点灯しないし、ラジオも混線して聞けなくなったことです。
かろうじてエンジンはかかるものの、運転は無理だったので、その日は仕事を休んで車をお祓いしてもらいました。
霊体はことのほか念が強くて、なかなか私から離れようとしないので、このような事件が起きたのです。知り合いの可能性が高いといわれ、地縛霊だとばかり思っていたのに、意外な展開となりました。
生霊からメッセージを受け取る
その男性はなんと生霊であり、過去に私がお付き合いして別れた相手だったのです。
それまで死霊だけしか見たことがなく、生霊は初めてだったので、本当に驚いたし、心の底から恐ろしいと思いました。生霊の場合、なかなか離れないのが特徴であり、本人は意識せずに念を飛ばしているケースが多いです。
すでに連絡先は分からなくなっていたので、注意することもできず、結局その後2~3日、霊障に悩まされました。でも幸いなことに、毎晩、金縛りで彼を見ていましたから、「もう離れて」と何度も訴えつづけたのです。
めまいや息苦しさが取れるまで住職にお祓いを続けてもらったのも、効果があったように感じます。死霊よりもタチの悪い生霊ですが、その頃の私に「けじめをつける」という大事なメッセージを伝えてくれたと思いました。
人は成長の過程で、やむを得ず生霊からメッセージを貰うことがあります。とても恐ろしい事件として起こりますが、相手への強い意志を示せば、必ず取り払うことができるでしょう。
私と同じような出来事に遭遇したら、早めに神社やお寺に行って、お祓いしてもらうことをお勧めします。